前向きに Jazz!

日々進化し続けるJazzとともに歩んできた終わりのない旅

Category: guitar (第2期)  

Gene Ess / Absurdist Theater

  Gene Ess (g, synth, compositions)
  Thana Alexa (voice, lyrics)
  Manuel Valera (p, key)
  Yasushi Nakamura (ab, eb)
  Clarence Penn (ds)

  Recorded March 5 & 6, 2016 at Bunker Studio, Brooklyn, NYC
  SIMP 160901 (2016)

  1. Out of the Ashes
  2. Circe’s Compassion
  3. Jade Stones
                          4. Kunai
                          5. Torii (The Gate)
                          6. Forkball (for Ornette)
                          7. Dejala Que Pase
                          8. Upward and Onward!

沖縄育ちでバークリー卒、現在はNYを拠点として活動する日本人ジャズギタリスト Gene Ess の新作。全曲自身の手によるオリジナル。

Gene Ess に関しては、10年程前からのボーカルを入れてないものに関しては比較的好印象を持っていたのだが、こうして Thana Alexa のボーカルを
入れてからの音楽を聴くのは、今回初めて。
一通り聴いてみれば、Thana Alexa のボーカルというよりは、ほとんどスキャットを多用したボイスという感じで、もちろん歌詞が入るものもあるのだが、
楽器と同じような位置づけで考えてよい扱いだ。
Thana のボイスは、高音域が印象的で伸びも良く、技術面でもハイレベルを感じさせるものもあり、本作のカラーを決定ずけているとも思える露出の
多さなど、Thanaを1トップに据えての形との印象。他のメンバーに関しても腕達者揃いで、楽曲そのものの魅力も含め、音楽としては、よくまとまって
いるとも感じるのだが、久しぶりで期待もあったこの Gene Ess の音楽は、私的好みからは、ちょっと外れた方向にいってしまった感もある。
そんな風に感じるのも、この高音域を駆使して爽やか感もある Thana Alexa のスキャットを生かした音楽のあり方とその質感。この辺は、音楽の良し
悪しというよりも、もう全くの好みの世界。この質感が、些細な事ではあるのだが、昔、フローラ・プリムが入っていた頃の “Return to Forever” をわず
かにイメージさせられてしまう部分があるのが、気になってしまった。こういう事は、一度気になり出したら、最後までつきまとってしまい、何だか、あの
ジャケットの大海原を飛ぶカモメまて゜目に浮かんできてしまう。
トータルに見れば、哀愁溢れるラインの曲や、心地良い4ビートにのっての鮮やかなギターソロ、あるいは、ハードな盛り上がりを見せる曲.........等々、
けっして、前述の負のイメージのカラー1色で染まっているわけでもなく、バラエティーある内容なのだが、それだけ “Return to Forever” のあの
サウンドが肌に合わなかったということなのだろう。そんな極部分的なイメージが、アルバム全体のイメージまで左右してしまうというのは、何とも
運の悪いアルバムともいえるのだが、聴いた人が悪かったということで諦めてもらうしかない。

そんなちょっとしたトラブルは、あったものの、フラットな目で見れば、それなりに見所もあり、今後に期待させられるところもあったのだが、特に Gene
Ess のギター、Thana Alexa のVocal には、光るものがあった。

リーダーの Gene Ess について、本作では、ギタリストとして先頭に立ち引っ張るという感じでもなく、コンポジション重視といった印象もあり、 あくまで
Thana をメインに据えての形をとっているため、彼女の感性が音楽全体のイメージを決めてしまっているといった印象もあるのだが、それだけに Gene の
コンポジションとともに Thana の個性の強さも伝わってくる。
ただ、そんな中でも、時折、入れてくる Gene のギターソロは、他のブルックリン系ギタリストとは、また一味違った魅力を放っており、やはりこの辺は、
血の部分も関係しているのだろうか、繊細で鮮やかなギターから放たれるラインには、熟成された音を感じる。
唯一のギタートリオ編成での M6 “Forkball” などを聴いていると、全編こんな調子でやってくれたら、どれほど魅力の盤になっていたことかと思ってしまう。
それだけ魅力も秘めたギタリストということでもあり、できれば次回は、ぜひ本作とは、違う形でお目にかかりたいものだが、その辺は Thana Alexa にも
同じような印象を持ち、現在の Vocalシーンでは、少数派とも言えるスタイルには、未知の可能性といったものも感じられ、次のステップでは、自身名義の
アルバムで、自身のやりたいようにやった音楽の中で聴いてみたいと思わせるものもある。

キューバ出身のピアニスト Manuel Valera については、これまでにも何度か聴いてはいるが、やはりどうも肌に合わない。なかなかのテクニシャンだが、
音楽からまずテクニシャンと感じてしまうのは、そこに何か足りないものがあるからといった漠然とした感覚を持っている。技術は、言わば音楽をつくるため
の道具、それをどう使うかというソフトの部分こそが全ての源であり、自分の好みを分ける基準もその部分のウェイトが極めて大きい。本作がアルバムとして
いまいち満足できないのも、このあたりの私的好みが多少関係したのかもしれない。

JAZZ-guitar 176
Gene Ess
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