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前向きに Jazz!

日々進化し続けるJazzとともに歩んできた終わりのない旅

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Category: sax (第2期)  

David Murray / Lovers

MurrayLovers.jpg  David Murray (ts)
  Dave Burrell (p)
  Fred Hopkins (b)
  Ralph Peterson Jr. (ds)

  Recorded in January, 1988
  DIW-814

  1. Teardrops for Jimmy (Dedicated to Jimmy Garrison)
  2. Lovers
  3. In a Sentimental Mood
  4. Ming
  5. Water Colors
                        6. Nalungo (For Nalungo Mwanga)

Tenor Sax 全般とはまた別に、Tenor Sax による Ballad には、なぜか特に心惹かれるものもあり、よく聴いていた時期があったのだが、今年に入り、
その辺のやつを、ちょっと引っぱり出しては聴いていたら、歯止めが利かなくなっちまい、以後時々お世話になっている。
ここ何年かは、どちらかというと無機質、冷徹..........と厳しいテイストのものを好んで聴いていた傾向が続いており、まあ、それも別に嫌いになった
わけでもなく、そういったテイストのものとは真逆のものも多いという Tenor Sax Ballads は、しばらく離れていたこともあり、新鮮かつ心地良く聴け
たといったことで、定期的に聴くということが、しばらく続いている。
今、自分の感性が、それを心地良く感じ、求め、楽しめているわけだから、それを拒む理由は何もない。普段とは、方向性の違ったものに接するのも、
感性のバランスを保つためにも、良いことだろう。

ということで、本日の一枚は、久しぶりの David Murray(B1955)の Ballad集 “Lovers”。

David Murray というと幅広いスタイルに対応できる柔軟性とそれを支える技術面でもハイレベルのものを備えたサックス奏者と私的には受けと止め
てはいるのだが、我が国では、その高い能力に見合った評価は受けていないとの印象も持っている。
それは、何でもできてしまうという彼の器用さ、万能性みたいなものが、もしかしたら掴みどころの無いといった印象、あるいはファンを分散させて
しまうといったことにもつながっているのかもしれないが、技巧面に優れ、何でもできるということそれ自体は優れた能力でもあり、私的には、
高評価のサックス奏者の一人でもある。
そんな多様、多面性も感じさせる Murray だが、表面上の形はいろいろ見せつつも、その根っこのところに常に感じるのは、彼のルーツでもある黒人
としての「血」の部分。伝統のスタイルから新しいスタイルまでカバーするワイドレンジの そういったスタイルは、別として「血」あるいはそこから
生まれた彼らの音楽の「伝統」といったものが一貫して感じられ、そのあたりは Archie Shepp にも通じるところとも感じている。

本作は、同時期に同じ当時のメンバーで録音された、「Lovers」 「Deep River」 「Tenors」 「Spirituals」 「Ballads」 といった言わば5部作中の
一枚で、Ballad を中心に選曲されたもの。
本作の Ballad にも、白人系テナー奏者には出し得ない、明らかに黒人としての血の部分を色濃く感じさせるものが底辺に絶えず流れており、そういった
強い個性の部分は、一方ではアクの強さといった負の要素として受け取られる場合もあり、広い層に受け入れられない要因ともなっているのかもしれない。
こうして、あらためて Murray をチェックしてみると、感性の質は違えど Shepp と共通するところが結構あることに気づく。また根っこのところにある
「血」の部分とともに Albert Ayler などの顔も浮かんでくるのだが、この辺もいずれ他作などでチェックしてみたい。
Ballad でありながらも、決してリラックスや癒しと言ったものではなく、エモーショナルではあるが、それに流されない醒めた目を持つその厳しい Ballad
表現の中にイージーに走ることのないMurray の音づくりの姿勢とともにその美学が見て取れる気がする。

             
             

JAZZ-sax 85
David Murray

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