前向きに Jazz!

日々進化し続けるJazzとともに歩んできた終わりのない旅

Sort bysax (第2期)

Category: sax (第2期)  

JD Allen / Radio Flyer

  JD Allen (ts)
  Liberty Ellman (g)
  Gregg August (b)
  Rudy Royston (ds)

  Recorded at Tedesco Studios, Paramus, NJ on January 2, 2017
  SCD2162 (SAVANT) 2017

  1. Sitting Bull
  2. Radio Flyer
  3. The Angelus Bell
  4. Sancho Panza
                      5. Heureux
                      6. Daedalus
                      7. Ghost Dance

ここ一週間ほどは、あれもこれもと、引っぱり出しては聴きの、アバクロにどっぷり浸かった日々になってしまったが、それぞれのアルパムに出会った
頃の状況なども思い出しつつ、これまでの流れを振り返っては、頭の中を整理するいい機会にもなったと、残念なことだが、そう考えよう。
しかしながら、これからは彼の新たな考えの詰まった新作にも出会えなくなってしまうというのは、何ともさびしいことだね.......................合掌!

で、アバクロの記事は、いずれまた機を見てということで、気分を変えます。

ここ10年近く続く JD Allen(B1972) のレギュラートリオに、ギターの Liberty Ellman(B1971) が参加するという私的注目の一枚。
Allen は、ピアノや管などを入れる時は、基本的に本作のこのトリオ以外のメンバーで、ユニットを組むことが多く、その点でも、この互いに知り尽く
した3人に新たな感性を迎え入れることの意味を考えると非常に興味深いものがある。また、Allen としては、珍しいギターという楽器、そしてそれが
コンテンボラリーからフリー寄りといった中間のエリアでの活動も多い Ellman という感性が、このトリオに及ぼす影響がどうあらわれるのか............
と、誠に興味の尽きないところだ。

根っこのところで、Rollins やら Coltrane なども感じさせる Allen だが、本作でも、その音楽の端々に微妙に漂うスピリチュアルなテイストやフレー
ジングなどからは、偉大な先人の影も感じることができる。コンテンポラリー系Sax奏者の中でも特に愚直なまでに硬派一直線といった姿勢には、
昔から一貫したものもある Allen だが、本作においてもその変わらないブレない音づくりの作法も感じられる。
本作の一つの関心事でもあった、感性面では、より先端寄りの尖ったものを持つ Ellman が、混入したことにより、Allen の音楽も変わるのかと、
興味もあったところだったのだが、この男、なかなかの頑固者のようで、音楽は、まっすぐ一直線、ブレを見せていない。
どう変化を見せるのかといった部分で、ある程度の期待もしていた自分としては、多少の不満もあったことは確かだが、その提示された音楽のクォリティ
には十分満足できるし、その不器用なまでの、融通もきかないまっすぐな姿勢には、何か共感させられてしまうものもある。
一般的には、融通のきかない、柔軟さもない音づくりの姿勢には、共感できない自分だが、彼の場合は、その先に自分の音楽を前に進めるといった
強い意志も見え、そこに共感できるのだ。
なので、本作の印象としては、その頑固なまでに自分を通す Allen に Ellman が、歩み寄ったといったところだろうか。まあ、Allen のリーダー作
だから、当然のことなのかもしれないが。
なので、普段はもう少し不穏度の強い空気感を振りまく Ellman のギターも、音そのものの印象とともに、多少ノーマルな立ち居振る舞いといった
印象もあり、Ellman サイドに立って見れば、多少の不満も残るのだが、それはあくまで Ellman 中心に見てということなので、このクァルテットの
トータルな音楽として考えれば、誠に魅力の一枚に仕上がっている。

この瞬間の対応と自由な動きも求められる音楽の中で、変幻自在に攻めのプッシュも見せる Rudy Royston のドラミングは、音楽に活力と推進力
を産み、その貢献度も絶大なものがある。

私的には、好みのテイストを持つ一枚として十分満足できるものだったが、欲を言えば、せっかく参加させた Ellman という自身のトリオには、今まで
無かった先進の感性を利用して、自身の新たな世界を打ち出すといったところまで、踏み込む柔軟性を持ち合わせていたなら、まちがいなく星5つ、いや
もう星半分おまけが付く内容だ。
Allen のSaxは、表面上のテイストにおいては、典型的コンテンポラリー系のものを感じさせてはいるのだが、よくよくそのフレージングなど細部を
聴いていると、先人の残した伝統の影を随所に感じ取ることができる。それは、決して悪いことではなく、むしろ好ましいこととも言えるのだが、
全ては程度問題、まっすぐブレない姿勢も大事だが、度を超すと可能性を狭めてしまうことにもなる。結局、その辺の塩梅を判断するのも才能
ということになるのかもしれないが............。

M5 ”Heureux” あたりでの速めの4ビートの展開における Ellman のソロなどを聴いていると、あらためて Liberty Ellman というギタリストの
独自性もある魅力も感じるという1枚でもあったが、この Ellman の立ち位置とカブるエリアでシゴトのできるところも見せてくれた Rez Abbasi
を、ここにあてはめても、何かまた違ったおもしろいイメージができた。そんな1枚でもあった。

JAZZ-sax 91
JD Allen
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Category: sax (第2期)  

David Murray / Ballads

DMballads.jpg  David Murray (ts)
  Dave Burrell (p)
  Fred Hopkins (b)
  Ralph Peterson Jr. (ds)

  Recorded at A&R Recording, New York in January, 1988
  DIW-840 (1990)

  1. Valley Talk
  2. Love in Resort
  3. Ballad for The Black Man
  4. Paradise Five
                      5. Lady in Black
                      6. Sarah’s Lament

David Murray(B1955)の Ballad集。同じ Murray のBallad集としては “Lovers” があるが、同メンバーで同時期に録音したものである。
本作は、Ballad集としてのタイトルもついているのだが、厳密に言うと、ラテンタッチで、Balladなのかな?といった曲など、2〜3入ってはいる。
もっとも Murray の場合は、Ballad の雰囲気でスタートしても、テーマからソロに入っていくと、ヒートするとともにしだいにテンポも速め、
奔放にブロウするといった展開も多く、そんな、あまり形にこだわらない自由なところも Murray らしさということなのだろう。

Murray曲3、Burrell曲2、Peterson曲1という内容。
人の受け取り方は様々だが、私的には、Murrayの Ballad の魅力は、アドリブ部分に凝縮されているように思う。これは Getz がテーマ部分
を、ただストレートに吹いただけで、それはもう見事な歌にしてしまうのとは、全く違った印象を覚える。
Murray の場合は、テーマからアドリブに入っていくとスイッチONになったように、音は自由に飛び、奔放なソロ展開となるのが彼のスタイル。
そんなエモーショナルに起伏ある展開も見せるのだが、そんな流れの中でも、決して己を見失うことない自らを俯瞰視する眼を持ち、ヒート
しつつも、クールに音をつなぐ、いい意味での冷めた制御機能も持ち合わせている。
また、音楽には、彼が黒人であるというルーツの部分を、常に感じさせる何かが流れており、それは聴き手の好みを分ける部分になっているの
かもしれないし、広く多くの人に受け入れられない部分ともなっているのかもしれない。
個性派というのは、すなわちそれを強く支持する人と嫌う人に大きく分かれ、中間層が比較的少ないといった傾向がある。どこの世界も
同じだな........................。

JAZZ-sax 90
David Murray

Category: sax (第2期)  

Archie Shepp / Ballads for Trane

BalladsForT.jpg  Archie Shepp (ts, ss)
  Albert Dalley (p)
  Reggie Workman (b)
  Charlie Persip (ds)

  Recorded at Long View Farm Recording Studio, May 7, 1977, North Brookfield, Massachusetts.
  DC-8570 (Denon)

  1. Soul Eyes
  2. You Don’t Know What Love is
  3. Wise One
  4. Where Are You?
                      5. Darn That Dream
                      6. Theme for Ernie

Archie Shepp(B1937)が、師匠 Coltrane没後10年という節目の年に吹き込んだ Trane縁の曲により、彼に捧げたBallad集、Shepp ちょうど
40才時の作。
Shepp は、初期に “Four For Trane (1964 Impulse)” そしてTrane死後わずか3ヶ月という時期のドイツ Donaueschingenでのライブ盤
“Live at The Donaueschingen Music Festival (1967 SABA)” という、やはり本作同様に Coltrane に捧げる意もあるアルパムを出しており、
SheppにとってColtrane がいかに大きな存在であったかも伺い知れる。

そんな意味もある本作だけに、Shepp のメンタル面もいつにない充実を見せており、何かを確かめるかのように丹念にラインを辿りつつ、歌い込ま
れるTrane縁の一曲、一曲には、濃密に詰まったSheppのほとばしる思いも感じられる。
特にBalladで見せるSheppの豊かな感情注入力には際立ったものもあり、静の中にも時折、抑えきれなくなった激しいエモーションの吐出も見せ、
静かにそして激しく、緊張感を保ちつつも、奔放に紡ぎ出される起伏に富んだラインは、極めて味わい深い、Ballad集としている。
リラクゼーションに満ちたBalladではなく、張りつめた空気が漂う心地良さであるところが、40才時のSheppのBallad集らしい。
同じBallad集では、約20年後の Venus における4部作中の一枚 “True Ballads” とともに、私的には常に一軍帯同を認めてきた2枚である。

小細工なし、テナー一本で勝負するといったあたりも魅力な Tenor Ballad だが、この “You Don’t Know What Love is” も、間にピアノソロを
挟むこともなく、甘さを押し殺して一気に吹ききるリラックスや癒しといった世界とは無縁の Ballad は、厳しくも美しい。

            

JAZZ-sax 89
Archie Shepp / Ballads For Trane

Category: sax (第2期) > Tenor Sax Ballads  

Tenor Sax Ballads

Harry Allen (B1966)
 Maybe September (Day Dream 1998)

John Coltrane(B1926)
 Violets for Your Furs (Coltrane 1957)

Stan Getz (B1927)
 But Beautiful (Stan Getz & Bill Evans 1964)
 Close Enough for Love (The Dolphin 1981)
 Dear Old Stockholm (Line for Lyons 1983)
 First Song (People Time 1991)

Dexter Gordon (B1923)
 Don’t Explain (A Swingin’ Affair 1962)
 I’m a Fool to Want You (Clubhouse 1965)
 The Christmas Song (The Panther 1970)
 The Shadow of Your Smile (The Shadow of Your Smile 1971)
 album “Nights at the Keystone 1978-1979”

David Murray (B1955)
 album “Lovers 1988”
 album “Ballads 1988”
 For Cynthia (Shakill's II 1993)

Spike Robinson (B1930)
 The Shadow of Your Smile (Spring Can Really Hang You Up The Most 1985)

Sonny Rollins (B1930)
 My Reverie (Tenor Madness 1956)
 You Don’t Know What Love Is (Saxophone Colossus 1956)
 I‘ve Grown Accustomed to Your Face (Rollins Plays for Bird 1956)
 I Can't Get Started (A Night at the Village Vanguard 1957)
 
Archie Shepp (B1937)
 album “Ballads For Trane 1977”
 In a Sentimental Mood (Live in Tokyo 1978)
 Go Down Moses (I Didn’t Know about You 1990)
 album “Black Ballads 1992”
 album ”Blue Ballads 1995”
 album “True Ballads 1996”
 album “True Blue 1998”

Zoot Sims(B1925)
 Violets for Your Furs (Jutta Hipp with Zoot Sims 1956)

武田和命(B1939)
 album “Gentle November 1979”

JAZZ-tenor sax ballads
Category: sax (第2期)  

Dexter Gordon / The Shadow of Your Smile

  Dexter Gordon (ts)
  Lars Sjosten (p)
  Sture Nordin (b)
  Fredrik Noren (ds)

  Recorded at “Stampen”, Stockholm, Sweden by Sveriges Radio April 21, 1971
  SCCD 31206 (SteepleChase)

  1. Once I Had a Secret Love
  2. Polkadots and Moonbeams
  3. The Shadow of Your Smile
  4. Summertime

ゆったりとした流れの中で、ちょっと遅れぎみに音を置いてゆくといった、独特のタイム感を持つ Dexter Gordon(B1923-1990)のBallad は、
ゆったりとした中にも適度にハリのある空気感を生み出し、沈んだトーンの絵画でも思わせるような、味わい深いものがある。
本作中の Ballad “The Shadow of Your Smile” も彼のBalladレパートリーとしては、おなじみのナンバーで、ライブや他アルバムでもよく見ら
れる持ち歌のような一曲。
E.テイラー & R.バートン主演の映画「いそしぎ(The Sandpiper 1965)」のテーマ曲(J.マンデル)ということで、ヘタにやるとベタでチープな
イメージにもなってしまうところだが、そこは Dex、Jazz の Ballad として気品もある堂々とした Ballad に仕上げている。
一見普通なのだが、他の誰でもない個性もあるこの歌い手は、私的には、Tenor Ballad を語る時、外せないひとりである。

同曲では、アルバム “True Ballads(1996)”中のArchie Sheppの厳しいBallad表現もお気に入りだが、Sheppは、’67年のDonaueschingen
における全1曲というライブ盤の中でも、この「いそしぎ」のテーマを挿入させる箇所があり、彼にとっても縁のある曲となっている。
また、テナーでは、Spike Robinson の ”Spring Can Really Hang You Up The Most” での同曲も当時、度々聴いていたのを思い出す。

            

JAZZ-sax 88
Dexter Gordon

Category: sax (第2期)  

武田和命(Kazunori Takeda) / Gentle November

 GentleNovem2.jpg

武田和命 (ts)
山下洋輔 (p)
国仲勝男 (b)
森山威男 (ds)

Recorded Sept. 20, 21, ‘79 at Sakado-Bunka-Kaikan, Saitama
SC-7104 (OMAGATOKI)

1. Soul Trane
2. Theme for Ernie
3. Aisha
4. It’s Easy to Remember
5. Once I Talked
6. Our Days
7. Little Dream
8. Gentle November

1989年、49才の若さでこの世を去ったテナー奏者、武田和命(B1939)のBallad集。
録音は、埼玉県坂戸市の文化会館となっているが、ライブではなく、スタジオとしてそこを使ったようだ。
武田和命というと、10年程、シーンから姿を消していた時期もあり、幻のテナーマンなどと呼ばれていたのは、よく知られた話だが、彼のイメージとしては、
この復帰後の山下洋輔グループでのフリーキーに吠える印象が強く残っているのは、多くの人が持つところかもしれない。

本作は、そういったある意味、現在の自分を越えて新しいものを産み出そうというクリエイトすることの産みの苦しみを伴う緊張感から離れ、現在(当時)の
武田和命の素が素直に現れたという点で、いろいろのシバリから解き放たれたかのような、その純な音にただただ心打たれるのである。その一音一音噛み
締めるように歌うことに徹した武田のテナーから繰り出されるラインは、清らかな流れのごとく澄み切っており、心の奥底まで直に染み込んでくるのである。
おそらく彼自身も感じていたに違いない、生涯でも数少ない、メンタルの境地にあることを。
その辺りを、敏感に感じていたであろう、山下のピアノが好サポートをみせている。というよりむしろこのgentleなピアノは、武田のテナーにより引き出され
たといった感じもあり、素で歌うピアノは、邪心の無いテナーにそっと寄り添い、ひたすら支え、絶妙な絡みを見せている。
普段の慣れたスタイルではないというあたりが関係しているかはわからないが、山下のピアノは、運指にややスムーズさを欠くといったあたりも微妙に感じ
るところはあるのだが、あるいは、あえてのタッチなのか.................そんな小さなことはどうでもよいと思えるほどに、それを吹き飛ばすほどの武田を支え
るという気の充実が見られるあたり、本作の好結果を生んだ要因でもあるだろう。

後半4曲が、武田のオリジナルとなっているが、M5 “Once I Talked” など、何か感じるものもある美曲で、私的お気に入りとなっている。

以前、心惹かれた Tenor Ballad に耳を傾けることも度々というこの頃で、20年ぶりぐらいで聴いた本作、ストイックに自身の心の音と向き合う武田和命
のテナーに心打たれる、我が国のTenor Ballad史に残るほどの名作であるには違いない。が、やはり、John Coltraneという偉大な先人の存在があった
ればこその本作であることも違いない、そこはしっかりおさえておきたい。

JAZZ-sax 87
武田和命 
Category: sax (第2期)  

For Cynthia (from “Shakill's II”) / David Murray

             

             David Murray (ts)
             Don Pullen (Hammond B3 Organ)
             Bill White (g)
             J. T. Lewis (ds)

             Recorded October 5-6, 1993 in New York Columbia
             DIW 884 (1994)

本作は、昔、ロック → ブルースを経てJazzに流れ込んできた当時、それまで馴染みのあった guitar やら organ を集中的に漁った結果、他楽器へと
関心が向き始めたのも手伝って、当時のorgan の主流でもあった黒くコッテリした世界から距離をおきたくなり、その結果、長い間 organ とは、無縁の
時が続くことになったのだが、そんな頃、出会った盤。
本作の前作「Shakill’s Warrior」中の1曲「In The Spirit」とともに本作中の1曲「For Cynthia」での Don Pullen の organ が、離れていたorgan に
再び目を向けるきっかけとなった。

時にディープ、スピリチュアルといった顔もある Murray だが、あくまで軽いノリの Medium Ballad とでも言いたくなるようなキャッチーで哀感ある
曲調の流れの中、サラッとした Pullen のハモンドの、第一期と言える時代にイヤと言う程、接してきた黒いオルガンの世界とは違うそのテイストに
新たなオルガンの世界に入るきっかけとなったもの。
後半の Murray の泣き節もディープになることなく、あくまでライトにそして奔放に歌うテナーが、本曲を一段レベルアップさせた感もある。

本作記事UP当時は、YouTubeにこんな曲がリストされてるはずもなかったのだが、最近はかなりマイナーなものまであるのには、おどろいた。
あらためて動画をUPしておきます。

JAZZ-sax 86
Category: sax (第2期)  

David Murray / Lovers

MurrayLovers.jpg  David Murray (ts)
  Dave Burrell (p)
  Fred Hopkins (b)
  Ralph Peterson Jr. (ds)

  Recorded in January, 1988
  DIW-814

  1. Teardrops for Jimmy (Dedicated to Jimmy Garrison)
  2. Lovers
  3. In a Sentimental Mood
  4. Ming
  5. Water Colors
                        6. Nalungo (For Nalungo Mwanga)

Tenor Sax 全般とはまた別に、Tenor Sax による Ballad には、なぜか特に心惹かれるものもあり、よく聴いていた時期があったのだが、今年に入り、
その辺のやつを、ちょっと引っぱり出しては聴いていたら、歯止めが利かなくなっちまい、以後時々お世話になっている。
ここ何年かは、どちらかというと無機質、冷徹..........と厳しいテイストのものを好んで聴いていた傾向が続いており、まあ、それも別に嫌いになった
わけでもなく、そういったテイストのものとは真逆のものも多いという Tenor Sax Ballads は、しばらく離れていたこともあり、新鮮かつ心地良く聴け
たといったことで、定期的に聴くということが、しばらく続いている。
今、自分の感性が、それを心地良く感じ、求め、楽しめているわけだから、それを拒む理由は何もない。普段とは、方向性の違ったものに接するのも、
感性のバランスを保つためにも、良いことだろう。

ということで、本日の一枚は、久しぶりの David Murray(B1955)の Ballad集 “Lovers”。

David Murray というと幅広いスタイルに対応できる柔軟性とそれを支える技術面でもハイレベルのものを備えたサックス奏者と私的には受けと止め
てはいるのだが、我が国では、その高い能力に見合った評価は受けていないとの印象も持っている。
それは、何でもできてしまうという彼の器用さ、万能性みたいなものが、もしかしたら掴みどころの無いといった印象、あるいはファンを分散させて
しまうといったことにもつながっているのかもしれないが、技巧面に優れ、何でもできるということそれ自体は優れた能力でもあり、私的には、
高評価のサックス奏者の一人でもある。
そんな多様、多面性も感じさせる Murray だが、表面上の形はいろいろ見せつつも、その根っこのところに常に感じるのは、彼のルーツでもある黒人
としての「血」の部分。伝統のスタイルから新しいスタイルまでカバーするワイドレンジの そういったスタイルは、別として「血」あるいはそこから
生まれた彼らの音楽の「伝統」といったものが一貫して感じられ、そのあたりは Archie Shepp にも通じるところとも感じている。

本作は、同時期に同じ当時のメンバーで録音された、「Lovers」 「Deep River」 「Tenors」 「Spirituals」 「Ballads」 といった言わば5部作中の
一枚で、Ballad を中心に選曲されたもの。
本作の Ballad にも、白人系テナー奏者には出し得ない、明らかに黒人としての血の部分を色濃く感じさせるものが底辺に絶えず流れており、そういった
強い個性の部分は、一方ではアクの強さといった負の要素として受け取られる場合もあり、広い層に受け入れられない要因ともなっているのかもしれない。
こうして、あらためて Murray をチェックしてみると、感性の質は違えど Shepp と共通するところが結構あることに気づく。また根っこのところにある
「血」の部分とともに Albert Ayler などの顔も浮かんでくるのだが、この辺もいずれ他作などでチェックしてみたい。
Ballad でありながらも、決してリラックスや癒しと言ったものではなく、エモーショナルではあるが、それに流されない醒めた目を持つその厳しい Ballad
表現の中にイージーに走ることのないMurray の音づくりの姿勢とともにその美学が見て取れる気がする。

             
             

JAZZ-sax 85
David Murray

Category: sax (第2期)  

Jon Irabagon John Hegre & Nils Are Drønen / Axis



  Jon Irabagon (sax)
  Jon Hegre (g)
  Nils Are Drønen (ds)

  Recorded at N.K. Berlin 11th June 2013 and at New Combo Fukuoka 14th January 2015
  RAC2190 (Rune Grammofon) 2017

  1. Berlin
  2. Fukuoka


2008年モンク・コンペのウィナーでもあるフィリピン系米国人 Jon Irabagon(B1978) の新作。といっても録音は、2013年のベルリンそして2015年
の福岡でのライブという内容になっている。
Irabagonを初めて知ったのは、彼の初期作 “Forty Fort” なるアルバムのジャケットだったのだが、これが自分のJazz歴では、初期の頃の大のお気に
入り盤だった“Roy Haynes / Out of The Afternoon” のジャケットを模したものだったこともあり強い印象として残る結果となり、他にも調べて
みたら御大 Rollins の “Way Out West” のジャケットをビキニのおネエちゃんを入れて、おふざけでつくったようなものなどもあり、Irabagon の
初期印象として、自分の中では、すっかり際物的イメージがつくられてしまったのは、まずい出会いだったとも言える。

ストレートアヘッドからフリー、そしてその中間的なエリアなど幅広いところでの活動もしてきた Irabagon だが、それは元来持っている多様・多面性
の結果なのか、あるいは自身進むべき方向模索の結果なのか、自分でも彼の全てを聴いてきたわけでもなく、掴めないところだが、漠然と陰と陽の顔を
持ったミュージシャンとの印象も持っている。
そんな Irabagon だが、本作は、フリーインプロビゼーションというスタイルをとりながら、陰の面が色濃くあらわれた一作。
本作と似た編成では、いずれもギターの Jostein Gulbrandsen 絡みで、ベース入りクァルテット編成の参加作、コンポラテイストのものは聴いているのだ
が、ベースレス、ギター入りトリオという編成では、初めてのリリースになるんじゃないだろうか?これも本作の、フリーな展開を求めた結果なのだろう。
ノイズ系ギターの使い手とも言われる Jon Hegre(B1967)は今回聴くのは初めて、そしてドラムスの Nils Are Drønen は、Hegre とはユニットを組む
など周知の仲らしい。
1曲18分前後といったものが2曲、Irabagon のサックスが起点となり、それに Hegre, Drønenが反応していくといったフリーな展開が多いのだが、
どちらかというとノイズ系ギターを苦手としている自分としては、フリーな作としてまずまずとする一方、3者のあり方を見直せば、もっと何かが生まれ
たかもといった印象もあり、トータルに見て、さらによくなる余地を残す作として、満足の内容というわけにはいかなかった。
ただ、Irabagon のプレイには、いずれ何かヤラかすんじゃないかといった得体の知れない大きなポテンシャルを感じることができたという点で、そこに
出会う機会を得たことは何よりの収穫だった。

全くの自分勝手な見方だが、これは彼にとって、言わば開発・試作の場といった位置づけのもの、ここで得た成果を彼が求める方向性での表現に生かし
たいと考えるのが自然。これほどの才能、これとは別に多くの人にインパクトを与えられる形でその表現の場をぜひ設けてもらいたいという思いである。
Jon Hegre のギターは、ここではノイジーというより空間系を感じさせるプレイが目につくが、Drønen のドラムスとともに、あくまで起点となっている
のは Irabagon であり、それに反応していくといったプレイからもう一歩踏み出して、対等に関わっていく形がとれれば、その刺激により Irabagonから、
さらなるものも引き出せたかもといった思いもある。私的好みで言わせてもらえば、どフリーではなく。ある程度の秩序を持たせた中での自由度という
ことで、メインストリームとフリーの中間エリアでのシゴトにいいイメージができ、Irabagon の感性は、そのあたりにフィットするとも思えるのだが......、
共演者を含めた活動フィールドによっては、爆発の予感もさせる才能だ。


Jon Irabagon Organ Trio
Jon Irabagon(sax) Pat Bianchi(org) Rudy Rotston(ds)

Irabagonが、オルガンにPat Bianchiを迎えたトリオだが、
以前は、追った時期もあったBianchi は、近年の自身作、参加作では、コンテンポラリー系オルガニストとして、すっかり輝きを失ってしまった感もあった
のだが、Jon Irabagon そして Rudy Royston という感性(触媒)の効果か、全く質の違うオルガンを見せていいる。
当ブログでも Bianchi には、自身をステップアップさせるためにも、自身の先を行く感性との共演を積極的に求めていってほしいと度々書いてきたのだが、
コンポラ系オルガニストとして、新しい道を切り開いていく気があるならば、険しい道を選択していく覚悟が必要だ

            

            

JAZZ-sax 84
Jon Irabagon

Category: sax (第2期)  

Maybe September (from ”Day Dream”) / Harry Allen

  Harry Allen (ts)
  Tommy Flanagan (p)
  Peter Washington (b)
  Lewis Nash (ds)

  Recorded September 14 & 17, 1998
  BVCJ31004 (NOVUS J) 1998

  01. A Sleepin’ Bee
  02. Maybe September
  03. I’m Checking Out, Goodbye
  04. A Child is Born
                      05. Shibuya After Dark
                      06. The Midnight Sun Will Never Sets
                      07. Three and One
                      08. Day Dream
                      09. Low Life
                      10. They Say It’s Spring
                      11. The Christmas Song

普段の記事内容から、あまりイメージできないかもしれない、この Harry Allen だが、元々雑食性で節操がないという自分であり、あるジャンルにこだわ
って、出会いの可能性を狭めたくはないという気持ちでいる。Jazzファンであるよりも音楽ファンでありたいというのがスタンスである。
Jazzにおける“Tenor Ballads” は、材料となる曲を、奏者がTenor一本で、いかに料理するかというシンプルな世界。あまり新旧のスタイルにこだわると、
おいしい部分を逃してしまうといったこともあり、奏者の音楽的方向性も広くカバーしている。

また、Ballad集は別として、通常のアルバムでも、なかなか納得のBalladに出会えることが多いわけでもなく、それでも出会えればいい方で、せいぜいあっ
ても1〜2曲というところだろう。本作も、ほとんど Ballad “Maybe September”の1曲聴きアルバムになっていた。それでも満足のアルバムである。
アルバムトータルを平均点で計るような見方、評価はしない。私的には、最高到達点こそが問題であり、そこでアルバムの評価、つき合っていいけるアルバ
ムかが決まる。たとえ、1曲でも高いレベルで評価でき、好きと感じられるものがあれば、それが評価であり、常に平均点でプレイする奏者より、バラつき
はあっても、時に平均を遥かに越えられる奏者に魅力を感じるし、やはりそこが能力であり評価の基準として考えたい。道楽でつき合っているので、それで
よいと思っている。

良い Ballad の条件として、曲自体に魅力が無いと、なかなか魅力の Ballad にはならない。曲と奏者の感性、技量などの条件が高いレベルでかみ合って
こそ魅力の Ballad が生まれる。本曲は Percy Faith の作曲によるもので、その辺にも恵まれ Harry Allen のデリカシーに富んだ歌心が加わり魅力の
Tenor Ballad としている。
ビターテイストもいいが、Balladだし、甘さに徹した繊細な表現にも納得。正解などない世界、これもありだ。
(動画は、本アルバムのものとは、別です。)

            

JAZZ-sax 83
Harry Allen

Category: sax (第2期)  

Blue Train (from “True Blue”) / Archie Shepp

            
            Archie Shepp (ts, as, vo)
            John Hicks (p)
            George Mruz (b)
            Billy Drummond (ds)

            Recorded at Clinton Studio “A” in N.Y. on September 13, 1988.

            初っ端から、コジャレたJazzなど、吹っ飛ばしてしまうような、情け無用のドスの効いたテナーが吠える!

本作記事は → こちらから
その他の Archie Shepp 関連記事は → こちらから


告)当ブログの記事をコピーし、自身サイトの記事として使っている方へ

Archie Shepp の当プログ 2010年11月13日付の記事 「Live in Tokyo / Archie Shepp」 について、記事内容をそのままコピーして、自身の記事
として使用しているサイトがあるが、実に情けなくも恥ずべき行為である。そして、それが同じSheppのファンであるらしいことに、何とも寂しい
気持ちにもなるのである。Shepp が好きなら、彼の音楽から、自分自身が感じた思いをなぜ書かないのかと.................。
それにより、逆に当方がコピーしたかのような疑いの目で見られたと思われるようなこと、また将来に渡り、そういったあらぬ疑いもかけられる余地
を残すということで、この状況を断じて容認するわけには、いかない。
自身の感性が受けとめた感覚を素直に表現すること、そこに音楽ブログとしての存在する意義がある。そこを曖昧にしてしまうと、すべてが信頼性を
欠き、読者を裏切る結果になることは自明の理。
しばらく前から気がついては、いたのだが、こんな告知は、する方も気持ちのよいものではないし、できれば自身で非に気づき、あらためてくれれば
との思いも空しく、一向に変わる様子もないので、告知に踏み切ったしだい。
今一度、良心を信じ、該当ブログを公にすることは、今は、控えますが、コピーした該当記事の削除もしくは、間違いをあらため、自身のことばで
表現することを期待する。   当ブログ管理人 2017.2.16

JAZZ-sax 82
Category: sax (第2期)  

David Fettmann / Ruby Project

  David Fettmann (as)
  Guillaum Naud (org)
  Jonathan Blake (ds)

  Recorded in September 2014 by Nicolas Charlier at Studio des Egreffins(Videlles)
  DMCHR71150 (DoubleMoon) 2015

  1. Pop 1
  2. Lecha Dodi
  3. Before
  4. Maoz Tzur
  5. Pontoise
                      6. Abi Gezunt
                      7. Kabanos Time
                      8. Avinu Malkeinu
                      9. Phoenix           All compositions by David Fettmann, except 2, 4, 6, 8

リーダーでasの David Fettmann は、フランスのオルガニスト Matthieu Marthouret の”Upbeats” に1曲ゲスト参加しており、記事歴はあるのだが、
1曲のみ参加で、彼目当てでのゲットではなかったこともあり、ほとんど記憶には残っていない。
本作ゲットのきっかけとなったのは、未聴のオルガニスト Guillaum Naud が参加していたこと。
未聴で若手というのは、知らない新しい感性に出会うことを1つの目的としている自分にとっては、最も求めるパターンであり、ましてドラムスに
Jonathan Blake の参加、曲目などの状況から、おぼろげながら、おおよそ求める方向性の音楽も予想できるとなれば、尚更のことである。

一聴してみれば、旧時代を引きずった感もなく、求めていた今の空気感も溢れたコンテンポラリーサウンドになっており、まずは一安心。

Fettmann のasは、特別に先端寄りで先進感もある音というものはなく、あくまで今の時代の中庸を行くといった感性。したがって、その音楽も、小難しい
要素も一切なく、よく歌うアルトは、余計なことも考えずに気持よく聴いていられるといった印象の一枚に仕上がっている。
通常、こういった感じだと、もうちょっと捻ったところもなどと、多少の物足りなさも伴うものだが、不思議とその辺の感覚がないのも、センスと言ってしま
えば、そういうことなのだが、言葉では説明のできない部分だ。

情報不足ではっきりした経歴等は、わからないが、名前からフランス系と思われるオルガンの Guillaum Naud も、そのクォリティは高い。先進感という
点では、中庸を行くリーダーよりも、先をゆく部分もあり、ノーマル路線のリーダー Fettmann の作に、ほんのわずかではあるが、新しいテイストをプラス
してアルバム全体としてフレッシュな印象にしたとも思えるところは見逃せない。
これまで、現代Jazz Organシーンの中心となっていた Larry Goldings、 Sam Yahel、 Gary Versace............など主に米国系のコンテンポラリーオルガ
ニストが、そのオルガニストとしてのリーダー作リリース頻度が極端に落ちているという状況もある中、こういった今の感性を持った若手オルガニストに
出会える機会があったことは、その停滞感に不満を持ちつつ現代のJazz Organシーンをずっと見てきた自分としては、何にも代え難い収穫なのである。

本作は、難しい要素一切なし、オルガン参加のJazzとしては、今の時代のスタンダードなJazzとして、コジャレ感、粋にスイングする曲、哀感溢れた曲など
バラエティに富んだ楽しめる一枚となっており、3者のセンスも感じられるが、そんな活力ある音楽としているのも Jonathan Blake の貢献度大とも感じる。

M6 “Abi Gezunt” の Fettmann の哀感あるアルトのライン、鋭い切り込みも見せる Naud のオルガン、多彩なショットの Blake のドラムスなど、
コジャレたラテンタッチで、なかなか盛り上がる。

JAZZ-Sax 81
David Fettmann


Category: sax (第2期)  

Archie Shepp / I Didn't Know about You

  Archie Shepp (ts, as, vo)
  Horace Parlan(p)
  Wayne Dockery (b)
  George Brown (ds)

  Recorded November 6, 1990, Munchen, Germany
  CDSJP370 (Timeless) 1991

  1.Go Down Moses (Let My People Go)
  2.I Didn't Know about You
  3.Billie's Bossa
                      4.Hot House
                      5.The Good Life
                      6.Now's The Time
                      7.Ask Me Now
                      8.Party Time

ドス黒く深い哀感がうず巻く

時の流れとともに、それぞれの時代の新しい空気に触れ、また、それまで出会うことのなかった新種の感性との出会いなどを通し、自分の感性の変化、
そして好みの変化もあり、聴く音楽の方向性も徐々に変わってきてはいるのだが、そんな変化の流れの中にあっても、変わることなく、時々は聴かないと
どうにもおさまりがつかないという Archie Shepp。その音楽には、時代の流れに左右されない普遍性と根っこのところにはトラディショナルな響き、
そしてさらに突き詰めていった先には、消し去ることのできない濃厚な Blues の血も感じられる。
あのドギツくペイントしたシャレコウベのジャケットでも、おなじみのインパルス時代からのつき合いだから、もう長い。特に腐れ縁というわけでもないが、
何か心に響くものもあり、その特異な呪術的響きには、常習性もあるからなのだが、今回もなぜか無性に聴きたくなっちまった1曲があり、久しぶりの
蔵出しとなった。

"Go Down Moses (Let My People Go)"

ピアノでもなく、ギターでもなく、トランペット、いやアルトでもなく、なぜかテナーの Ballad に心惹かれていた時代に出会った Archie Shepp
の一曲は、スピリチュアル色も濃厚な "Go Down Moses"。
この曲、Balladという範疇に入れていいものなのか、迷うところだが、もしBalladの定義を「心に温もりの灯がともるような」とするならば、
それはもうりっぱなBalladだろう。

このアルバムに出会った頃というのは、楽器ごとに聴くものが集中してしまう悪癖があった時代で、しばらくSaxから遠ざかっていた時期、
Stan Getz のラストアルバム"People Time"(別頁あり)との出会いをきっかけに、再びSaxを聴くようになった頃だったと記憶している。
それ以前、第一期Sax期と言える時代にフリージャズに手を染めていた Shepp が好きだった自分には、久しぶりの再会となった。
この頃のSheppには、かつて破壊してきた伝統の再創造とも思えるような今のSheppに繋がっていく下地がすでに出来上がっていた。
そして特に魅せられた冒頭の1曲 "Go Down Moses" だが、むせかえるような体臭もほとばしる濃厚なShepp節が炸裂する。
特にイン・テンポになったあたりからの泣く子も黙るドスの利いた凄みすら感じるテナー。そしてその背後に渦を巻くように流れるドス黒く
深い哀感、これはもうSheppだからこその世界で、この味を出せるテナーは、他にはいない。自分がSheppのテナーに惹かれるのも、多分に
この部分が関わっているのは間違いないだろう。

             

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JAZZ-sax 80
Archie Shepp

Category: sax (第2期)  

Gary Thomas / Exile’s Gate

ExileャsGate  1, 4, 7) Gary Thomas (ts) Charles Covington (org) Paul Bollenback(g) Jack Dejohnette(ds)
  2, 3, 5, 6) Gary Thomas(ts) Tim Murphy(org) Marvin Sewell(g) Ed Howard(ab)
        Terri Lyne Carrington(ds) Steve Moss(pec-6)

  Recorded at Power Station, NYC May 19 - 23, 1993
  JMT 314 514 009-2 (1993)

  1. Exile’s Gate
  2. Like Someone in Love
  3. Kulture Bandits
  4. Blues on the Corner
                     5. Night and Day
                     6. No Mercy Rule
                     7. Brilliant Madness         All compositions by Gary Thomas except 2, 4, 5

前世紀末ぐらいに何度か聴いて以来だから、長いことご無沙汰していたが、ちょっとしたきっかけもあり、久しぶりに聴いてみたので記事としておきます。
オルガンの2人をターゲットとしてのゲットだった。
Thomas のオリジナルが4曲、そして2種のユニットで、それぞれが3曲と4曲というつくりになっている。

オルガンを大胆に絡めたサウンドは、今聴いてもなかなか楽しめる。当時、大きく巾を利かせていたコテコテ系のオルガンではないのがミソだが、そのあたり
のチョイスは、Thomasのセンスでもあり、当時としては先進感もあるサウンドだった。
CDなどでは、ほとんど露出のないこの2人のオルガンで、特に近年の Covington(B1941) は、伝統も感じさせる極オーソドックスなオルガニストといった
イメージしか湧いてこないのだが、ここでの彼ら2人のオルガンから繰り出されるフレーズは、当時としては、オルガンという分野においては、なかなか新しい
感覚によるものであり、時代としては、現在のコンテンポラリー系オルガンの中心となっている Larry Goldings, Sam Yahel, Gary Versace...............と
いったオルガニストよりちょっと前の時期でもあり、同時期に同じように新しい感覚を持ったオルガニストとしては、Jeff Palmer やら Dan Wall など
Abercrombie絡みのオルガニストが思い出される。ただ Palmer や Wall にしても、その後大きな成果を残すことなく、シーンからフェイドアウトしていった
感もあるのだが、Larry Young が残したものを現在のコンテンボラリー系オルガンにつないだという点で、貴重な存在だったとも思える。
本作の2人は、この Palmer や Wall に比べるとその後のCDなどメジャーシーンへの露出は、極端に少なく、おそらくスタジオミュージシャン的な活動が
中心となっていたものと想像する。近年の伝統芸に染まったCovingtonも知ってはいたが、あらためて本作を聴き、当時としては、先進感もある感性を振り
まいていたオルガニストが、その後ほとんど露出が少なくなってしまうというのは、ただでさえ人材不足のオルガンという分野では、数少ない感性だけに、
非常に残念に思えてならない。当時のオルガンの状況を考えれば、周囲の固定されてしまっていたイメージもあり、求められるのは黒いものということで、
そこから外れた感性のオルガンには、需要が極端に少なかったという寂しい状況も関係しているのだろう。
他楽器と比べ圧倒的に絶対数が少なく人材不足も重なり、あまりにも Jimmy Smith の影響が長きに渡り続いてしまったことが、進化を送らせ、その他の
楽器、特殊分野といった位置づけとしてしまった一つの要因でもあるのだが、その流れを変えるのは、やはり革命家の出現、そこにつきるだろう。

当時のM-Baseムーブメントの立役者の一人 Thomas のアグレッシブなブロウは、スタンダードもなかなか過激に料理しており、アルバムとしても活気に
溢れた一枚に仕上げている。Dejohnette のアタックの強いドラミング、そしてファンク調ナンバーにおける Terri Lyne Carrington の粘るように糸をひく
ドラミングが印象的。

JAZZ-Sax 79
Gary Thomas

Category: sax (第2期)  

Tony Malaby Paloma Recio / Incantations

  Tony Malaby (ts, ss)
  Ben Monder (g)
  Elvind Opsvik (b)
  Nasheet Waits (ds)

  Recorded March 16th, 2015 at Systems Two by Joe Marciano and Max Ross.
  CF367CD (Clean Feed) 2016

  1. Glass
  2. Artifact
  3. Hive
  4. Procedure

Tony Malaby’s Paloma Recio による2009年作 “Paloma Recio” に続く2作目、メンバーも変更なし。

Opsvik の呪文のようなアルコと音数を抑えた Monder のギターで静かに入る冒頭曲、その徐々に空間が構築されていく流れにヤラれた。
その妖しさもある静寂の空間に、いつのまにかMalaby がスーッと透明感に溢れたソプラノを流し込んできて、空気感はラストに向かって徐々に冷から
微熱を帯びていく。そのゆるやかな変化の流れに美が漂うM1の冒頭曲。

4ビートで、ややハードボイルド感もあるテーマからオーソドックスに始まるM2、既成のスタイルを拒否したかのような Monder のソロがキレ、
場は、緊迫した空間と化し、めまぐるしいリズムの変化も見せる中、続くMalaby の怒濤のテナーでピークに、ラストに向かい Monder のギターが
彼方の空間に突き抜けてゆく。

循環奏法を使った(?) Malaby のソプラノから入るM3。
徐々にヒートしていく Malaby のソプラノ、しなやかに強い。Monder のギターが入り、その絡みでピークをむかえる。

イマジネイション溢れる Opsvik のベースから入る17分超のM4。
飛び道具と化した Monder のギターが飛び交い、剛柔織り交ぜてはウネりまくる Malabyのテナー、スリリングな瞬間を供給する Nasheet Waits
のドラミング、そしてビシッと決まるエンディング。ことば無用の音世界だ。

全4曲、それぞれ独立したものというより、何らかの関連も感じられる組曲仕立てといったものとも受け取れる。

耳を澄まさないと聴き取れないほどのデリカシーに富んだピアニシモから大胆なフォルテシモに至るまでフルに使ったレンジの広い表現が音楽を
ダイナミックにしており、そこでは、個々のソロは、確かに自由に溢れたものなのだが、そこに目を向けるよりも、一歩引いてグループのトータルな音楽と
して見るならば、あたかも計算されつくした上での精緻な仕上がりも見せる構成美すら感じられるのだが、それは最初から計算され予定したものというより、
あくまで自由の結果として得たものなのだろう。そこまで読んだ上での自由、Malaby の深さか。
この環境を得て、水を得た魚のごとく、生き生きとしたMonderの存在感が、やけに目につくが、Malabyのイメージする世界観は、このMonderのアシスト
抜きでは考えられないほどのフィット感もあり、彼のスペイシーなギターワークも一歩前に進んだ感もある。
感性面では、共にダークな質感を持つという共通の部分もあり、互いの刺激するポイントも心得ているところもあるのか、その相乗効果で、結果もプラスに
作用しており、理屈抜きに、ダイレクトに脳髄に作用してくる音の起伏ある流れによる刺激は、ことば不要の音世界だ。
音による表現の先に、抽象的なものではあるのだが、どれだけ豊かなイメージを投影できるのか、といったあたりをミュージシャンを計る私的判断基準の
一つとも考えているが、そういう意味では、久しぶりに骨のある一枚との出会いだった。

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